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角川書店
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(2012-10-05)
コメント:BBC制作、あの名探偵が21世紀に生きていたら?という現代版シャーロック・ホームズ
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ガイ・リッチー監督版、RDJ主演の映画『シャーロック・ホームズ』(2009年〜)シリーズのインパクトも新しい近年ですが、
ホームズの本国であるBBC(英国放送協会)も、2010年から「名探偵シャーロック・ホームズが21世紀の現代に生きていたら?」という切り口でドラマ『SHERLOCK』を制作しています。
映画の方はテレビCM等派手に宣伝していたので、上映当時から存在を知っていました。(1作目も2作目も映画館で見た)
今回取り上げるBBCドラマ版(現代版)は、昨夏に職場の女の子が熱心に面白さを語っていたことで存在を知りました。
彼女はNHKBSで昨夏放送されたシーズン1を見てはまったらしい。
NHKBS放送までは知る人ぞ知る的な作品(とは言え、原作が有名タイトルかつ海外人気も高い作品だけに、日本放送前から熱心な日本人ファンもたくさんいたようです)でしたが、最近日本でもDVDが発売され、更に地上波放送もされて、日本での知名度・人気もかなり高い作品となりました。
ドラマ版の魅力は謎解き、そして何より前面に押し出されているキャラクターの個性の強さという印象です。
(キャラの強さで言えば、映画版も別方向にインパクトが強いですが)
名探偵シャーロックは原作の変人・奇行ぶりをそのままに、有能さを周囲に認められながらも、相手のことを観察しまくっては遠慮なく物を言うので周囲から煙たがられている男。
知的好奇心を満たす事件を求めて退屈な平和を厭う言動をするため、警察の一部には彼がいつか犯罪に手をそめるのではと疑われている。
ワトソンことジョンは、アフガニスタンの戦場でのPTSDにより足が不自由な元軍医。金がなく困っていたところ、ルームシェアの相手としてシャーロックを紹介される。
シャーロックの観察眼を素直に褒め、ブログで彼の活躍を公表する。相手を慮らないシャーロクをやむなくフォローして回る常識人だが、シャーロックの兄・マイクロフトに言わせると本心では平穏より冒険を求めている。
そんな一見デコボココンビが相棒として見事にハマって、犯罪解決の冒険へと出かけていくという実にエンターテイメントに溢れた作品です。
リッチー監督の映画版もそうですが、シャーロックとジョンが、原作の持つイメージよりも若くかっこいい(特にワトソンのイメージである「小太り」・「口ひげ」がない)のは、女性にも人気が出やすい要素であると個人的には思います。
所々、(一応ジョークとして)ゲイと勘違いされるネタを挟んできたりするところも。
高機能社会不適合者を自称するシャーロックは、人の感情の機微への理解がなく円滑な人間関係の構築が全然できていないのですが、
彼の超非常識な行動にも付き合ってくれるジョンの情の厚さや勇敢さ、誠実さに接する内に、次第に彼を友人として信頼するようになっていく。
この変化がシーズン1、2を通して言動からそれとなく伺い知れるところがいいです。
シーズン2の第2話では「僕に友達はいない」と言ってジョンを怒らせてしまい、後から「僕に友達はいない。たった一人を除いては」と精一杯のフォローをするところとか。
ドラマ版はホームズとワトソンというコンビに焦点を当てています。
ジョンは単なるシャーロックという超人の記録係ではなく、シャーロックの相棒であり、時に彼を人間的に成長させる友人でもある。
そして、シーズン2の第3話でジョン自身が明かしたように、彼もシャーロックのおかげで孤独から救われている。
超人とそれに圧倒される凡人ではなく、互いに人間同士として交流している彼らの話です。
(原作からしてワトソン君はホームズにとって信頼のおける重要な相棒であることは間違いないのですが)
勿論、事件の謎解き部分も原作のネタを取り入れつつ現代風にアレンジを加え、原作へのオマージュと新鮮さを加えた未知の事件に再構築しています。
シャーロックとジョン以外にも個性的なキャラクターがたくさん出て来て魅力的。
原作では「犯人を逮捕する役」なイメージしかないレストレード警部が、精悍でかっこよく、素人名探偵(シャーロック)と警察の微妙な関係をうまく表現しているし、
シャーロックの最大のライバル・モリアーティの役者さんは素晴らしい演技で粘着質な狂気的なモリアーティの怖さを表現しています。
あと、ハドソン夫人の安心感もいいし、検視官モリーがとても思いやりのある子でこれまたいい。
そして映画といいドラマ版といい、アイリーンは峰不二子っぽい(笑)
それにしても、映画やドラマが制作されるのを見るにつけ、100年以上の時を経ても魅力を失わない「シャーロック・ホームズ」というキャラクターを生み出したコナン・ドイル先生には敬服するばかりです。